吹き溜まり

成れの果ての降り積もる場所

【エルデンリングDLC・二次創作】歌う翼の貴婦人たち【翻訳記事】

皆様ごきげんよう、前回の記事からは明けましておめでとうございます。寒のもどりの激しいこの頃ですが、いかがお過ごしですか。今回の記事は中々出る気配のないエルデンリングのDLCを想像し、4ヶ月をかけてUnreal Engine 5で創造したEugenia Lysaさんの二次創作コンセプトアートと動画の紹介です。これがファンアートの域を超えたとんでもないクオリティの作品で、度肝を抜かれたのでその感動の片鱗を翻訳でおすそ分けしたいと思い、この記事を書くに至りました。動画のクオリティがとても高く、動画の進行と同じ順に翻訳したので、ぜひこの記事と一緒にご鑑賞ください。

youtu.be

はじめに

歌う翼の貴婦人たち

狭間の地の各所に現れる、歌う翼の貴婦人たちはどういった経緯と来歴でこうなったのでしょうか。後に発売されたデザインワークスでは「老婆蝙蝠」と名前が判明しましたが当時は、歌う蝙蝠、あるいはハーピーなどと呼ばれていました。Lysa氏はSinging Winged Dames(訳:歌う翼の貴婦人)と呼称しています。彼女たちが歌う曲はラテン語で、どこか物悲しい歌詞だと、海外から有志翻訳されているのは有名な話です。

 

このファンアートは、彼女たちの背景や歌詞から着想を得、「祝福された地」とはなんだったのか。そして「醜く異形と化した」来歴について妄想を膨らまし、あったかもしれないDLCを想像し、創造したファンアートです。

原文ラテン語の歌(左)と英語翻訳(右)。赤字の部分は「母性」と「黄金よ(略)」

ここの歌詞で気になる点は2つ、「母」とはなんだったのか、「黄金よ」とは何を為したのかに着目していきます。英語の元翻訳では「母」の部分はmotherhoodとされており、「母性」の意味も持ちます。すなわち「黄金律」が貴婦人たちの「母性」を阻害したものではないかと示唆されます。

では、この情報を元に、過去に遡るDLCが出るとします。

狭間の地のマップの左下、円卓の側の白い雲

https://twitter.com/alfreid17/status/1504943963656298503?s=20&t=E7VF2FXi7rPfIkIF66Mj8Q

雲を取り除いた、まだ見知らぬ地

https://twitter.com/alfreid17/status/1504943963656298503?s20&t=E7VF2FXi7rPfIkIF66Mj8Q

ここでは黄金律を盲目的に信仰する人々はいなく、外なる神である姿なき母と血盟を交わした者たちの島。

母性の彫像

そして、黄金の怒りに触れる前の蝙蝠の姿、貴婦人たちの本来の姿を垣間見えることができるでしょう。

歌う翼の貴婦人と血の貴婦人。啜り泣きの半島やケイリッド、リエーニエなどで見つかる人形の蝙蝠。かつて母はであったが、異形と化した。(上)
プレイヤーは異形となる前の姿をDLCマップの右上、「支度の閨房」で逢えることになる(下)

この島では、歌詞に出てくる「母」と為す事情、それがなぜ「姿なき母」に繋がるのか、謎を紐解いていくことになるでしょう

貴婦人たちの宴

少女ネレンとの出逢い

過去作の傾向としてDLCの物語は新規NPCを通して語られることが多いので、この幻想のDLCでは、「少女ネレン」がその役を担います。過去に飛ばされてすぐ近くの森でプレイヤーは彼女と出逢います。

少女ネレンとの出逢い。
「この森から、出れる方法をご存知ありませんか?」

この森から、出れる方法をご存知ありませんか?

森の霧の瘴気に当てられて、意識が朦朧としているのです....

私は祝祭に選ばれたのですが、このままでは、間に合えそうにありません

あぁ、婆様はお叱りになるでしょう

                          少女ネレン

その後、プレイヤーは森のギミックを解除して霧を突破できることになります。森を抜けた先には廃墟と、側にネレンが佇んでいます

森を抜けた先で出会うネレン
「ああ、貴方は!その節は、ありがとうございます。」

ああ、貴方は!その節は、ありがとうございます。

私としたことが、名乗っていませんでしたね。私はネレン。この春に「選ばれた」者です

どうか、これをお受け取りください 。姉の祝祭の前に、譲り受けたものですが

これしか、貴重なものを持っていないのです

琥珀のタリスマンを入手

姉は、もう城に到達しています

私も、試練に合格すれば、姉と再会して

他の美しい貴婦人たちと、仲間入りするのです!

                          少女ネレン

琥珀のタリスマン

緋色の琥珀で作られ、銀の茨の意匠が施されたタリスマン

人の形を朧げに象っている

 

異端魔術の威力を高める

王配ゴッドフレイの時代、祝祭は絶えた

だが知り得る者たちには、記憶として残っている

                       茨琥珀のタリスマン

儀式村ソレムニスにて

「儀式村ソレムニス」

次に彼女とまた会えることになるのは、儀式村ソレムニス(Solemnis Village)。本動画では解説されていませんが、Solemnisとはラテン語で「一年ごと」「宗教的な」「全ての年で行われる儀式の」という意味があります。

「婆様は姉にそっくりだと言われました」

ああ、貴方は!また会えましたね!

頭に飾った花を見てください、似合いますか?

婆様は姉にそっくりだと言われました

私も、姉のように、試練で強くあろうと思います

                          少女ネレン

エルデンリングの本編を遊んだプレイヤーなら村の雰囲気が「風車村ドミヌラ」と似通っていることに気づくでしょう。しかし、これはミスリード。その根底とあるものは「血」と「茨」の信仰に基づく、「血の儀式」のために集められた人々の集落であることが判明します。

「儀式村ソレムニス」のキャラクターコンセプト

「選ばれた」女性は「血の儀式」に成功すれば城へ入ることが許されるようです。その儀式とは?村の中心に進むことにより、情報が判明していきます

「儀式村ソレムニス」の中央付近

「婆様」と「少女ネレン」

村の中央ではネレンの会話に出てきた「婆様」が、血の盃をネレンに飲ませようとしてます。盃を飲み干した彼女は意識を失い、気絶。そして「婆様」がプレイヤーの気配に気づき、ボス戦が始まります

儀式村の婆

「婆様」を打ち倒すと、ネレンの身体から骨格が変わるような、肉と骨が軋む音が聞こえてきます。その変形に耐え難いように、彼女の残った声帯器官から絶叫が響き渡り、身体を中心に湧き出る赤い波が周りの白い花を赤く染めていきます。

ネレンの身体から湧き出る赤い波によって白い花が赤く染まる

ボス戦:虚飾の失敗作 (Failed Pretendent)

「血の儀式」はネレンを拒み、おぞましい化け物に成り果てた彼女はプレイヤーめがけて襲いかかります。

「婆様」「ネレン」「虚飾の失敗作(ネレンの事後)」

本来は血の儀式を失敗した少女を狩るのは「婆様」の役目。しかしその婆様を倒してしまったプレイヤーは身に降りかかる危機に対処せざるを経ません。

そして無事にネレンを倒したプレイヤーは、重い足取りの中、転移門をくぐることになるでしょう

ネレンを倒したあとに出現する転移門

備えの閨房へ到達

転移門は儀式に成功した少女たちの行く末。そこは、「備えの閨房」。大きな城を目前に、少女たちは何を思ったのでしょうか

備えの閨房(Prepatory Chambers)直訳だと準備の部屋

周りには血の薔薇が咲いており、「血」と「茨」の信仰を色濃く反映しているのが伺えます。横には閨房がいくつもあり、その中のベッドの上で横たわる遺体には「走り書き:ネレンへ」

閨房の一つの部屋。「走り書き: ネレンへ」

「走り書き: ネレンへ」

アイテム説明は、以下の通り:

貴婦人の遺体から見つかった古いメモ。

 

「すぐに、また会えることを願います

姉より」

                                                走り書き: ネレンへ

貴婦人の瀟洒な衣装を纏うこの遺体こそが、ネレンが慕っていた姉でしょう。彼女は閨房から逃れることなく息を引き取ったようです。彼女の身に何が起きたのか?

ここの城は、血の母が住まい、姿なき母を崇める開祖の地。儀式村より血の儀式に成功した実りある少女たちは閨房に連れて行かれ、貴婦人の服装を纏い、さらなる試練を課せられます。

最初の試練は本編でも登場した、「白面のヴァレー」が施した、血の指と似ているもの。艶めく鮮血に、その爪を浸された少女たちは「血の貴婦人」として生まれ変わる。

「白面のヴァレー」が血の施しを主人公の爪にしている図。血の貴婦人の最初の試練のイメージ

「血の貴婦人」役割は後述しますが、その最初の試練で肌は異様に青ざめ、感覚をなくし、帰らぬ人となる少女は多いようです。ネレンの姉もその一人でしょう。エリアを探索していくと、やがてボスに出会います。

「血の巫女、エルサ」

「血の巫女エルサ」はローデイル地下墓の「血の司祭エスガー」と似た敵。彼女は自分の祭壇で艶めく鮮血を実りある少女に施す役割。第一形態ではレドゥビアを使い、後半から新戦灰「血の貫き」や奇跡「蝿たかり」を混ぜ、新武器「儀式の血槍」を使う

エルサは最後の試練を司っており、彼女は実りある少女を鮮血の儀式を施し、少女たちはお腹に「姿なき母」の神聖な子供を身籠ることになります。生まれ落ちる子供たちは「姿なき母」の器候補として重宝され、「姿なき母」はより良い器を通して現世に宿すことができるのです。それはマレニアが、外なる神の「古き神、腐敗」をその身に宿したように。

補足: マレニアが「古き神、腐敗」を宿したという説は、タリスマン「青い踊り子」から推測できるとされています

青衣の踊り子を象った布人形
とても古い、伝承の遺物

装備重量が少ないほど、攻撃力が高まる

青衣の踊り子は、妖精であったという
妖精は、盲目の剣士に流水の剣を授け
古き神、腐敗を封じたと伝わっている

            青い踊り子 (エルデンリング)

繊細に紡がれた無垢金の針
ミリセントが、その身体から引き抜いたもの
邪な血の跡はなく、僅かな露に湿っている

外なる神の干渉を避けるための呪具であり
不治の宿痾、腐れ病を抑えるという

…私は、マレニアに返したいのだ
かつて彼女のものだった意志を
朱い腐敗の呼び声に、人として抗う矜持を

           無垢金の針・ミリセント返却時

上記より、青い踊り子がかつて封じたとされる外なる神「腐敗」が存在しており、生まれながらに腐敗と親和性の高かった神人のマレニアは「紅い腐敗の呼び声」に苛まれながらも最後は人の矜持を失い「腐敗の女神、マレニア」になった示唆されています。

「姿なき母」の子供を身ごもる最終試験を乗り越えた少女の像

そして、胎生の間へ

エルサを倒したあとに続く道は、「胎生の間」にたどり着きます。

胎生の間 (Delivery Hall) 直訳だと「出産の本堂」

奥には、この儀式を成功させた「血の貴婦人」が「血の母」と成り、集まっています。ですが、彼女たちは例外なく肌が異様に青ざめ、目は血眼で赤く、身体から角のような異形が飛び出し、細く痩せこけ、辛うじて生きているのがやっとな痛々しい姿です。

血の母(血の貴婦人の進化後)。血の巫女が「血の挿入」を血の貴婦人に施した末に選ばれた少女たちが「血の母」と成れる。「血の教会」で会う「血の貴族」と同じように忌み鬼の角が身体から生えている

しかし、その誰もが不完全な「血の母」であることにまだ話せる血の母から聞けます。失敗作だった彼女たちはこの胎生の間で放置され、死ぬ定めだそうです。そんな中、奥の部屋から鼓動を感じます。前へ進んでいくと、たった一人、「姿なき母」は出産に成功したようです

真実のゆりかご

成功した「血の母」

最終エリアとなるこのマップは、多くが肉塊で覆い尽くされ、蠢いています。

「血の母」は下半身の肉塊を愛でるように慈しみ、コウモリが歌っていた音程の子守唄を歌い聞かせている

血の母に近づくと、最終戦闘の合図になります。

マルゲリータ、血の淑女」(Lady Margherita) 彼女は「真実のゆりかご」(Cradle of Truth)のエリアと同化しているので、身動きが取れない。エリア中に湧く彼女の分身がプレイヤーに襲いかかる

自分の子をかばう母の苛烈さは、いつだって熾烈を極めるもの。彼女はすべての術をもってしてプレイヤーが姿なき母の器に近づくのを防ぎます。彼女は身動きがとれないので、自分の分身を作り、複数戦でプレイヤーを袋叩きにしてきます。

そして激闘の末、ようやく勝利したプレイヤーは奥に進んだ先は...

マルゲリータを倒したあと、鼓動する心臓に近づくプレイヤー

星の子、血の星

奥の蠢動する奇跡を目の当たりにするプレイヤー。近づくと、そこから血の炎が噴火し、辺りを焼き払い、星の子が現れます

血の星 (Blood Star)

「血の星」は姿なき母を体現する器。モーグゥイン王朝のような血の炎が周りに咲き乱れる。腕は四本あり、血炎、掴みをする腕、近接に特化した腕、刺突を中心とした血の放射物を飛ばす腕に分かれている。

血の星とは、魔術「罪の茨」や「罰の茨」のフレーバーテキストに出てくる単語。

追放された咎人たちの、異端の魔術
学院が最も忌み嫌うもの

罪の茨で自らを傷付け
周囲に、渦巻く血の大茨を召喚する
3度まで、連続で使用できる

茨でその瞳を潰された咎人たちは
永遠の暗闇で、血の星を見出したのだ

                  罪の茨(エルデンリング)

追放された咎人たちの、異端の魔術
学院が最も忌み嫌うもの

罪の茨で自らを傷付け
地を走る血茨を召喚し、敵を足元から刺し貫く
連続で使用することができる

茨でその瞳を潰された咎人たちは
永遠の暗闇で、血の星を見出したのだ

                  罰の茨(エルデンリング)

永遠の暗闇で見出した「血の星」とは「姿なき母」の器であり、「血の母」が産み落とした星の子であるということが最後にわかることになります。

そして、血の星を倒した時にもらえるアイテムが「血纏いの割れ雫」

血纏いの割れ雫 (Bloodburst Cracked Tear) 

黄金樹の恵みが降り注ぐ地に
永き時の末に生じた、結晶の雫

「霊薬の聖杯瓶」に配合し
一時的に、血攻撃力を高める

            血纏いの割れ雫

エピローグ

すべてが終わったあと、ギデオンにこの血の儀式と犠牲の風習を伝えると、「悪い冗談だ」と一蹴されます。

ギデオン「…ほう、母なる密教とやらは、ずいぶんと誇大妄想に取り憑かれた愚か者が祭り上げたものらしいな。悪い冗談だ。幸いにも、とうの昔に黄金律は奴らを処理したよ」

しかし、これでは貴婦人たちがなぜ蝙蝠の老婆に変わってしまったのか、明確な答えは得れません。その話を理解するには、このDLCで見つかるアイテムの説明文が鍵になってきます。

「贖罪の茨」「失われた王朝」「血の貫き」

血の星を崇める咎人たちの、異端の魔術
学院が最も忌み嫌うもの

贖罪の茨で自らを傷付け
対象の頭に、血の大茨を召喚しその瞳を潰す
3度まで、連続で使用できる

痛みなくして、真実は知り得ないものだ

                贖罪の茨(エルデンリングDLC)

放浪の画家の作品のひとつ
「失われた王朝」と題された絵画の記憶

その画家は、永遠の女王マリカがその地を呪い
死して消えゆく者たちの 最期の景色を描くという

今でも、その絵が描かれた場所にいけば
画家の霊と、最期の名残が見出せよう

                      絵画:失われた王朝(エルデンリングDLC)

武器に戦技と属性を付与できる戦灰
付与戦技は以下、付与属性は「血」

戦技「血の貫き」
血の巫女エルサが使う母なる密教の禁術
刀身に自らの血を纏わせ、激しい出血を強いる

刺突可能な武器に使用できる
(特大を除く)

          血の貫き(エルデンリングDLC

上記のアイテム説明文から示唆されるのは、黄金律は血の子供について知り、姿なき母の器となることを危惧したと推測されます。黄金律(引いては、律を率いる大いなる意思)はすでに永遠の都、ノクローンを滅ぼすために外なる神のアステールを送り込んだのはテキストで語られる有名な話です。

永遠の都の僧たちの絹のフード

太古、大いなる意志の怒りに触れ
地下深くに滅ぼされた、ノクスの民は
偽りの夜空を戴き、永遠に待っている
王を。星の世紀、夜の王を

        ノクス僧のフード(エルデンリング)

黄金樹に刻まれた
暗黒の落とし子、アステールの追憶

指読みにより、主の力を得ることができる
また、使用により莫大なルーンを得ることもできる

遥か彼方、光の無い暗黒で生まれた星の異形
それはかつて、永遠の都を滅ぼし
彼らから空を奪った、悪意ある流星である

        暗黒の落とし子の追憶 (エルデンリング)

であればこそ、大いなる意思は他の外なる神(血の星)が干渉することを恐れ、貴婦人たちとその密教を滅ぼそうとしたのは想像に難くありません。そうして、母なる密教の信者たちは世界に散り散りになったのでしょう:

  • 黄金律のマリカは貴婦人たちを老婆蝙蝠へ変える呪いを施し
  • 血の貴族たちは北の地に流刑にされ
  • 咎人たちは黄金律とレアルカリア学院の両方から追われ、原理主義者は迫害され火の巨人信仰と統合されるようになり

そうして、狭間の地の多くの歴史が、黄金律に抹消されたのです。今の狭間の地で見つかる老婆蝙蝠は痩せ衰え、血の魔術を封印され、自分たちから奪われた母性について悲しく歌うしかありません。

そう、双子の忌み子のモーグとモーゴットが生まれ、姿なき母をまた蘇らせようとするまでは... あるいは、繭の中に未だ覚醒せずにいるミケラがその役を担うかもしれません。

おわりに

いかがでしたでしょうか。去年に描き始めた記事が遅れに遅れて脱稿となります。Eugenia Lysaさんはその間にまた大規模な二次創作DLCを作り、聖トリーナ(ミケラ)をフォーカスしたティーザーも投稿しています。Lysaさんの次回作に乞うご期待ください。

youtu.be

 

 

【エルデンリング】銀の雫、アスィミ(Asimi)について【没データ・解析】

皆様ごきげんよう小暑を過ぎ、夏本番を迎えました。強い日差しの中、熱中症には気をつけたいものですが、いかがお過ごしでしょうか。今回の記事は没データと解析により判明した「銀の雫、アスィミ(Asimi)」について英語圏で没イベントを再構築されてる動画から、没となった日本語テキストを主体に再現していきます。また原文の日本語テキストはクズ底(@The_Gutter_)さんから情報提供をいただきました。ありがとうございます。

はじめに

アスィミ(Asimi)とは納期のデーモン開発の事情によって実装されなかったNPCとそのクエスト関係のコンテンツです。ゲームの解析をすると、断片的に残っているセリフやアイテムが存在しており、いわゆるカットコンテンツや没データなどと呼ばれています。ソウルシリーズの傾向としてはこういった没要素はDLCや次回作に昇華されるケースがあります。一例として『ダークソウル3』のタイトルBGMが本来は没になった「蝕の老王」(ラスボス)のテーマであり、本編ではそのアイデアは実装されませんでしたが次回作の『エルデンリング』のタイトルBGMはラスボス戦と一緒、といった具合にアイデアの再利用がされる傾向が見られます。また、同作のApp ver. 1.03には最新アップデートに含まれる内容に「小壺」や様々なNPCイベントにフェーズ追加といった、データでは存在していたけど追加要素として発表されるケースも有るため、一概にアスィミ(Asimi)は没ではなく、今後のアップデートに実装される可能性もあるかもしれません。

最後に前置きしたいのは、あくまで海外のファンが再構築した彼女の没イベントなので憶測や間違いが含まれることをご留意した上でご覧ください。

アスィミとの出会い

アスィミとの出会い

(どこか遠くから声が聞こえる)

お待ちください!

褪せ人の戦士様、私を殺す前に、話を聞いてください

私は、貴方のお役に立てます。だから、どうか、聞いてください …

 (話しかける)

ありがとうございます

私は、アスィミ。そして、本当の姿は銀色の雫

…生命に化け、模倣する。そういう存在です

ですが私は、知恵を得ました。こうして喋り、思考し…死に恐怖しているのです

ああ、だから褪せ人の戦士様、お願いです

私は貴方に、力を与えられる。だから、私を生かしてはくれませんか?

(いいえ)

…やはり、聞き入れてはもらえませんか

残念です。貴方こそと、感じたのに…

…褪せ人の戦士様、お考えなおし下さい

私の死骸から得られるものよりも、私の与える力の方が、遥かに優れています

どうか、私を信じては頂けないでしょうか?

(いいえ)

…やはり、信じては頂けないのですね

ですがまだ、貴方は私を殺していません

迷われているのですか?でしたら、私は待ちます

貴方が、私を信じてくださるまで

 (話しかける)

…褪せ人の戦士様、お考えは決まりましたか?

私は貴方に、力を与えられる。だから、私を生かしてはくれませんか?

 

(はい)

ああ、ありがとうございます

それでは、どうか私に口付けし、吸ってください

私は貴方の内で生き、特別な力を与えるでしょう

…これから、よろしくお願いしますね。宿主様…

銀の雫、アスィミを入手

銀の雫、アスィミのアイテム説明文

褪せ人に寄生したアスィミ

 

知性を持った白金の軟泥「アスィミ」は

褪せ人の体内に寄生し、力を与える

 

           銀の雫、アスィミ(エルデンリング)

アスィミとの旅道中

「銀の雫、アスィミ」を所持したまま祝福で休息すると、何らかの条件でメリナが話しかけてきます。

メリナがアスィミに言及するシーン

…貴方の中に、もう一人いるの?

それは、貴方が望んだことなの?

…悪意は、感じないから、貴方に任せるけど

…もう一人の貴方 私はメリナ。この人と、契約している

だから、しばらく一緒かもしれない

…宜しくね

                                            メリナ(エルデンリング)

「永遠の都ノクローン」周辺に来た際にアスィミが話しかけてくる

宿主様、少し宜しいでしょうか?

水の音が聞こえます。私の故郷、永遠の都の川の音が

宿主様、どうか永遠の都を訪れてください

それは古い星の神秘の地。きっと貴方のお力となります

                                            アスィミ(エルデンリング)

また、「永遠の都ノクローン」と「永遠の都ノクステラ」どちらともに近づいても上記のセリフが出るそうです。

永遠の都に到達したとき

ノクローンで休息中にアスィミと対話

宿主様、宿主様

ひとつ、願っても宜しいでしょうか?

私たち雫の揺り籠、聖杯が、この近くにあるようです

そこに、向かって頂けませんか?

そしてその聖杯を…飲み干して欲しいのです

ああ、宿主様。私は渇いています

渇きを癒し、瑞々しく潤ったのなら、私はもっと貴方の力になれます

宿主様。私はそうなりたいのです

英:会話に出てくる聖杯はゲーム内には没データとして存在していないがアイコンだけ残っている

(より深部で)

…宿主様、宿主様

この地には、雫の聖杯があるようです

…特別な、母なる大聖杯が

どうか、大聖杯をお探しください

それは、偉大なる星の神秘を宿し…

貴方と私を、きっと、完全なひとつにしてくれます

母なる大聖杯がありそうな場所

さあ、宿主様

どうか、大聖杯をお飲み干しください

そうすれば、貴方と私は、完全なひとつになります

(大聖杯を飲み干す)

…ああ、そんな…

宿主様、すみません

今はまだ、私は渇きすぎているようです

もうひとつの永遠の都で、揺り籠の聖杯を探し

まず、それを飲み干さなければ…

もう一つの大聖杯。アイコンのみ確認済み
(英:〔大聖杯は〕どちらともユニークなアイコンがあるが、実装されていない)

…宿主様、宿主様

この地にも、雫の聖杯があるようです

…特別な、母なる大聖杯が

どうか、大聖杯をお探しください

それは、偉大なる星の神秘を宿し…

貴方と私を、きっと、完全なひとつにしてくれます

大聖杯を両方飲み干す。
(英:クエストが没になった経緯で聖杯は別のアイテムに変わったと推測される)

…ああ、潤いに感謝します。宿主様…

(画面が暗転し、カットシーンが入る)

(聖杯を啜る音)

宿主様、私は嬉しい

知恵を得、出会った方が、貴方であったことが

…貴方の中で、こうしてここにあることが

(アスィミを吐き出す音)

目が覚めると、自分と瓜二つのアスィミが居る

…ああ、気が付きましたか

私たちは、完全なひとつになりました

なにも心配はいりません。私はまったく貴方のように…

貴方そのものとして生きるでしょう

写し身として完全になったアスィミ

アスィミの最期

別個体となったアスィミはここから別行動を初め、いずれまた遭うこと事になります。ですが、ここで殺害することも可能なようです

…ああ、どうしてこんな…

私は、貴方そのもので、私たちはひとつだったのに

…嫌だ、消えたくない…

私は、貴方に…

王に、なる…

(道中に出会った場合)

再びアスィミとの邂逅

…ああ、貴方、きてしまったのですね

出会いたくはなかった

貴方はエルデの王となり、私もまた、いつか永遠の王となる

出会わなければ、王は二人でよかったのに

アスィミとの戦い

(戦闘に負けた場合)

…貴方では、ありませんでしたか…

…ごめんなさい、宿主様

私は、王になります

アスィミに勝利

(戦闘に勝利した場合)

…私は死ぬ…

これが、恐怖なのですね…

…ああ、よかった

宿主様、私の、王よ…

この一連のクエストの報酬が「写し身の雫の遺灰」ではなかったかと、考察されています。

写し身の雫の遺灰

「伝説の遺灰」のひとつ

写し身の雫の霊体を召喚する

召喚には、FPではなくHPを消費する

 

召喚者の姿を模倣し、戦う霊体

ただし、その意志までは模倣できない

永遠の都が、王を創らんとした遺物である

         写し身の雫の遺灰(エルデンリング)

海外の反応

「永遠の都が、王を創らんとした遺物である」と説明文にある様に、一連のクエストでよく肉付けがされてる。カットされたのはもったいないな

「写し身の雫の遺灰」が一時期最強の遺灰であったことを鑑みると、この壮大なクエストの報酬であったことは妥当かもしれない

世界観の補足の観点からしたら、このクエストは興味深い。写し身はプレイヤーと瓜二つの女性のコピーであり、「永遠の王」となろうとした。立ち位置的に女王マリカと類似し、プレイヤーに王配ラダゴンの地位へと唆している。マリカとラダゴンが同一人物である本作の謎に踏み込んだ捉え方もできる。片方は写し身だったのではないか?

アスィミはギリシャ語で「銀」っていう意味なんだ。「Ασήμι」と書くよ

最期に

通読おつかれまでした。英語圏では割と有名に紹介されていますが、未だに全容が掴めてないアスィミの話でした。私が探した範囲だと没になった日本語テキストを掲載しているところが見つからなかったので、クズ底さんに感謝です。

参考資料

youtu.be

【エルデンリング考察】レナラの子供の歌詞【翻訳記事】

皆様ごきげんよう。梅雨明けが待ち遠しいこの頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。昨今では『エルデンリング』楽曲の歌詞は意味をなさないと話題に上がりました。その世界観の手がかりを巡って激論が行われ、その説を提唱するユーザーによるとラテン語で歌われている楽曲はただひとつ。ハーピィが歌う「Song of Lament(嘆きの歌)」のみだったとか。そこで今回の記事は英語で歌われている幼年の魔術学徒の歌について考察していたVaatiVidya氏の動画の一部を翻訳した記事となります。

はじめに

魔術学院レアルカリアには大ルーン持ちの一人、満月の女王レナラが座しています。カーリア王家の女王にして偉大な魔術師、そして英雄ラダゴンの妻であったとされる彼女との戦闘に前半では幼年学徒を交えた戦い。その後ありしの姿のレナラ単体で戦うことになります。その緒戦に幼年学徒が歌を歌っていますが、なにを歌っていたか気になりませんか?戦闘が忙しく、聞き取りづらいので声の音声だけを切り抜くと、こういった風に聞こえます。

満月の女王、レナラ戦の幼年学徒

幼年学徒の歌の歌詞

Sleep tight, bound tight

by Mother's amber

Sleep tight, find life

in Mother's umbra

                 幼年学徒の歌(エルデンリング)

ぐっすり寝なさい、固く抱き締められながら

母様の琥珀より

ぐっすり寝なさい、生命(いのち)を見つけて

母様の本影より

                 日本語訳:幼年学徒の歌

 

(元が詩であるゆえに翻訳が難しく、韻を踏んだ言葉遊びや語感の良さは筆者の翻訳能力では力不足だったので、意味が伝わるレベルの翻訳だとご了承下さい。)

第一節

第一節に歌われている”Mother's amber"とは、女王レナラが持っている「琥珀のタマゴ」のことでしょう。それはかつての夫ラダゴンから授かり、中には「生まれなき者の大ルーン」を宿しています。レナラはそのタマゴで幼年学徒を繰り返し生まれ直していることが以下フレテキから分かります。

レアルカリアの長たる女王レナラ
その琥珀のタマゴにより産まれ直した
幼年の魔術学徒たちの帽子

しかし、その産まれ直しは完全ではなく
彼らはそれを、ずっと繰り返し
いつかそれに依存してしまう

夜眠り、朝目覚めるように
彼らは産まれ直し、すべてを忘れいく

                 幼年学徒の帽子

「夜眠り、朝目覚めるように」とあるように、この歌は子守唄のような形容をとっているのではないと思われます。

第二節

第二節に出てくる単語の"Umbra"とはどんな意味でしょうか。辞書を引いてみると、以下の様なことが書いてあります。

umbra

1. 陰

2. 【天文】

a) アンブラ、暗影部《太陽黒点の中央暗黒部》

b) 本影《月食のときに太陽の光がまったく当たらない地球・月の影の部分》

                 weblio 新英和辞典

このように、本来は陰という意味だけですが、満月の女王たるレナラの立ち位置を鑑みて考察すると「本影」の意味ではないかと推測します

Umbra(本影)

本影は皆既月食に於ける最も暗い部分であり、すべての部分が本影に入る場合は皆既月食。一部分だけが本影に入る場合を部分月食といいます。すなわち本影とは月の影の部分であり、満月の女王の陰から生まれる彼女の子供は詩的な響きがあります。幼年学徒は月の影の中より生まれ変わるのです

満月の女王、レナラ

最後に

ここまでが、Vaati氏の動画の翻訳となります。この歌詞は英語圏では聞き取りの齟齬で討論が行われていることはまだ見かけていないので、暫定的には正しい情報として考察する価値があるかもしれません。そして、この解釈は絶対的に正しいものではなく一例だということをご理解いただければ幸いです。

 

補足

ここからがこの記事を書くに至ってVaati氏が提唱する説に対して私の理解が及ばなかったことの補足となります。

皆既日食に於けるUmbra

まず、Umbraの解説図が出ているときには皆既月食(Lunar Eclipse)についてVaati氏は語っているのですが、この画像は皆既日食のものかと思われます。皆既月食の図は以下に

月食の仕組み(国立天文台 天文学センター)

上記のように、地球の影が月を覆ったときに起こるのが月食であり、Vaati氏が提唱している「月の影」たるものは皆既月食では(地球にいる限り)見えないと思われます。本影とはすなわち天体の影であり、月食では地球の影で、日食では月の影の影響で起こる現象かと思われます。皆既日食であれば本影の説は筋が通っているので、言い間違いがあったかもしれません。

参考資料

youtu.be

 

【ブラッドボーン】フロム作品のオマージュ、元ネタについて考える【翻訳記事】

皆様、ごきげんよう。早いもので今年も折り返し地点の頃となりました。夏の兆しが感じられる向夏の折、いかがお過ごしでしょうか

今回の記事はフロム作品、より具体的に言うと私が推している宮崎さんが手掛けた作品のオマージュ、元ネタ、パクリについてZullie the Witchさんが解説していたのを翻訳し、部分的に内容を補足した記事となります。

はじめに

このブログを読んでいる方に宮崎英高さんの説明はいらないと思いますが、軽くふれておくとフロム・ソフトウェア代表取締役社長でありながら開発前線のディレクターとして活躍しているゲームクリエイターです。彼が手掛けた作品は独特な世界観が評価されていて、しばしばその湧き出る独創性や感性はどういった作品の影響を受けて生まれたのか話題に上がります。

インタビュー記事や出演していたWEBラジオでは西洋の小説やゲームブックテーブルトークRPGTRPG)などを明言されていて、代表的な例としてはスティーブ・ジャクソン作の『ソーサリー』(Sorcery!)が挙げられています

シャムタンティの丘を越えて(ソーサリー)

また、TRPGで影響を受けていると明言されているのはケイオシアム社が発売していたルーンクエストの『ドラゴン・パス』です

ドラゴン・パス(ルーンクエスト

余談ですが、この古のTRPGを検索しているときに『ドラゴン・パス』なのか『グローランサ』あるいは『ルーンクエスト』かよくわからない事に陥りがちでした。要約すると

上記となるのですが、これも良くわからないのでダークソウル3で例えましょう。

いかがでしょうか。厳密には違うのですが、大体こんな事だと理解しています。間違っていたらご指摘ください。

クラグスパイダーと混沌の娘クラーグ

ドラゴン・パスの話を続けると、『ダークソウル』の「混沌の娘クラーグ」がインスパイアされているという事が「ダークソウル・デザインワークス」で語られています

クラグスパイダー(左)と混沌の娘クラーグ(右)

左の吹き出しでZullie the Witchさんが引用しているのは巻末インタビューの一節

宮崎「(前略)じつは、クラーグには、イメージの現泉みたいなものがあって。ボードゲーム『ドラゴン・パス』っていうのがあるんですが、私はこれがすごく好きで、その中に、クラグスパイダーっていう独立勢力のユニットがあるんです。名前と、パラメーターと、すごく小さなチップに印刷されたシルエットだけなんですけど、なぜか印象に残っていて、あれこれ想像していて。結局、ぜんぜん違うものになっていると思いますけどね。私自身、『ドラゴン・パス』に限らず、古いテーブルトークとかゲームブックとかが好きで。(中略)」

佐竹「ぐしゃぐしゃの手垢まみれ状態になった古い文庫本を広げて、ここのコレみたいに言われることよくあります(笑)。」

                                                     ダークソウル・デザインワークス

マジック・ザ・ギャザリングの影響

古いテーブルトークとかゲームブックが好きな宮崎氏が他に好きなものとして、マジック・ザ・ギャザリング、通称MTGも挙げられます。過去に発言していたWEBラジオでは大学でMTGを扱うカードゲームのサークルに入っていたとか。また、同ラジオで生涯他のゲームを遊べないとしたらどのゲームを選びますか?という質問に対して「MTG」と答えていた所から、かなりのファンであることが伺えます。

MTGの大型エキスパンション、イニストラード

そして2011年の晩年、MTGはゴシックホラーをモチーフとしたイニストラードというの舞台のエキスパンションを発売。大テーマの「ホラー」を表現するために吸血鬼、狼男、ゾンビ、幽霊などの部族が登場しました。

同時期に『ダークソウル』が初めてPS3XBOXに発売。その後、フロム・ソフトウェアは各種アップデートやDLCなどでサポートを続けますが、その頃にはイニストラードの小型エキスパンション、「闇の隆盛」と「アヴァシンの帰還」が発売されます。

小型エキスパンション「闇の隆盛」と「アヴァシンの帰還」

「アヴァシンの帰還」が店頭に並んでいた頃『ダークソウル』はPC版のPrepare to Die EditionとDLCの開発終盤でした。そして、宮崎氏がソニーPS4独占タイトルを共同開発始めたと、噂されました

ソニーと共同開発のPS4独占タイトル

クラグスパイダーの制作時のように、宮崎氏がMTGのカードを当時の開発に広げて、「ここのコレみたいに」と共同開発で言ったことは想像に難くないことです

町民の結集/Gather the Townsfolk (闇の隆盛)

二人組の見張り番/Tandem Lookout (アヴァシンの帰還)

イニストラードの狼男

ブラッドボーンの狼

ブラッドボーンの影響

ここまではイニストラードがブラッドボーンの元ネタだったり、オマージュしたという仮定ですが、時を経てその逆もまた然りといった見方もできるのが面白いところです。

ヤーナムはイニストラード同様に吸血鬼、狼男、ゾンビ、幽霊など跋扈するゴシック・ホラーですが、同時にラブクラフト作品のようなコズミック・ホラー要素もあります。

ブラッドボーンが発売された1年後、イニストラードには追加カードセットの「イニストラードを覆う影」と「異界月」が発表されます。キャッチコピーは「事変の謎を追え」。テーマはイニストラードを覆う「狂気」と「謎」。

引き裂かれし永劫、エムラクール

再びイニストラードが舞台となったMTGではエルドラージの「エムラクール」がその世界を覆ってます。エルドラージとは次元の狭間から現れた怪物で、コズミック・ホラー要素として上位者がヤーナムを覆ってた所と似てますね。

そしてストーリーのクライマックスではエムラクールはイニストラードの月へ封印されます。ブラッドボーンに於ける月の魔物の立場の類似性に注目が集まります。

月の魔物 (ブラッドボーン)

エムラクールが封印されてから夜が長くなり、魔物たちは豪奢な生活を営み始めます。最新のイニストラードの作品、「真夜中の狩り」や「真紅の契り」では「オリヴィア・ヴォルダーレン」が結婚式を開こうとしています。

エドガー・マルコフとの結婚式を開こうとするオリヴィア・ヴォルダーレン

吸血鬼... カインハースト.... オリヴィア....アンナリーゼ....婚姻の指輪。

婚姻の指輪 (ブラッドボーン)

また一つ、『ブラッドボーン』と『イニストラード』の不思議な繋がりが増えました。

 

すべて、単なる偶然の一致....ですよね?しかし、これらすべてを偶然の一致と一蹴するのは、より不気味ではないでしょうか?

 

最後に

通読おつかれさまでした。あとがき、というか余談ですが、邦訳版「ドラゴン・パス」パケ絵のキャラがエルデンリングに普通に居そうですね。もし、そういった同じ感性を持ったそこの貴方、ダクソの源流を感じられる「ルーンクエスト」おすすめです。ガチドマイナーTRPGで全然情報がないのでネットで情報を見つけたときに達成感を味わえます。

参考資料

youtu.be

 

【エルデンリング考察】ゴッドウィンとその恐ろしい真実 【ネタバレ翻訳記事】

エルデンリングをお楽しみの皆様はいがかお過ごしでしょうか。発売から当初の熱狂からほとぼりが冷め、色々な初期考察が飛び交った中、大分落ち着いた印象を受けます。

今回の本題はゴッドウィンとその実態について、海外の著名な解析者である Zullie the Witch (和訳:魔女ジャーリー)さんが動画を上げていたのでその内容を日本語でも共有したいと思ったので書き始めました。考察とは名を借りていますが、解析班であるゆえにメタ的な読みも含まれる内容を含めるので純粋な考察を想定されている方はご注意ください。

ゴッドウィンとは

最初に、ゴッドウィンが誰かおさらいしましょう。「黄金のゴッドウィン」あるいは「死王子」と呼ばれる彼は、マリカの子孫であるデミゴッドで最初の死者として「陰謀の夜」に殺され、褪せ人が狭間の地に訪れる事の端緒でもあります。

・・・落ちた葉が伝えている
偉大なる、エルデンリングは砕けた
霧の彼方、我らの故郷、狭間の地で
永遠の女王マリカは隠れ
黒き刃の陰謀の夜、黄金のゴッドウィンが最初に死んだ
マリカの子たるデミゴッドたちは、エルデンリングの破片を得
その力に歪み、狂い、破砕戦争を起こし・・・
王なき戦いの末に
大いなる意志に、見放された

                                               (オープニング『エルデンリング』)

その顔の主は、死王子であるという
彼は、かつてゴッドウィンと呼ばれ
デミゴッド最初の死者として、王都の地下深く
黄金樹の根本に埋葬されたという

                                               (死王子の瘡『エルデンリング』)

生臭く膿んだ人面の業瘡
抗死耐性を大きく高める

その顔の主は、死王子であるという
デミゴッド最初の死者たる黄金の貴公子の
死にきれず、穢れきった死に顔であるという

                                               (死王子の業瘡『エルデンリング』)

かつて、黒き刃の陰謀の夜
黄金のゴッドウィンを殺した刺客たちの短刀

その奇妙に捻れた刃には、儀式により
盗まれた死のルーンの力が宿っている

                                               (黒き刃『エルデンリング』)

2体のゴッドウィンの謎

しかし、エルデンリング作中にはこの上記の「黄金樹の根本」以外にも彼の姿を確認できます。「ストームヴィル城地下」と「深き根の底」に居ます。

 

ストームヴィル城地下のゴッドウィン

 

深き根の底のゴッドウィン

そもそも、なぜ彼が2回も作中に登場するのでしょう?2体の死体は納期の関係で間違って配置されたのか、あるいは開発途中に用途が変わってその名残としてそのまま登場したかの印象を受けます。

ここで、世界観に沿った仮説を一つ立てます。

ゴッドウィンの目のアップ

死の根とゴッドウィンの関係性

彼は深き根の底で動かぬ躯と座していますが、ゴッドウィンの影響は世界各地に蔓延していることが推し量れます。

死に生きる者たちを、生み出す源

東の果てにある獣の神殿では
獣の司祭が、これを集め喰らっている

陰謀の夜、盗まれた死のルーンは
デミゴッド最初の死となった後
地下の大樹根を通じて、狭間の各地に現れ
死の根として芽吹いたのだ

                                               (死の根『エルデンリング』)

ここから、ゴッドウィンは「死の根」の生み出し、その「死の根」が「死に生きるもの達」を生み出していることがわかります。

この死の根が、世界に芽吹くゴッドウィンの一部ではないでしょうか

その根拠として深き根の底にあるゴッドウィンの身体の周りにある根には目のようなものが芽吹いてます。

ゴッドウィン周辺に芽吹く「目」

そしてこの現象も、深き根の底だけに留まったものではありません。

狭間の地に芽吹く「目」

死に生きるもの達のが登場する周辺にあるオブジェクト

ファルム・アズラにある芽吹く「目」

もっとも不思議なのが天高く存在する「崩れゆくファルム・アズラ」にも影響がみられます。しかし、これもファルム・アズラの獣人(骨)が存在することで、仮説としては一応スジは通ってます。

不思議なのは、狭間の地から隔絶されたはずのファルム・アズラにまで影響を及ぼしているところを見ると、彼の死の根の影響力は物理的に繋がりがなくても可能なことが測れます。

ゴッドウィンと恐ろしい真実

話を狭間の地に戻すと、物質以外にも影響を及ぼしている痕跡が見つかります

王都外堀の蟹の甲羅に浮かぶ「目」と「鼻」

そしてこの位置をマップで確認すると、深き根の底のゴッドウィンの身体がある場所の真上に位置しているので、何かしらカニが食べているものがゴッドウィンの一部を芽吹いてるようです。

また、ダークソウルオマージュと思われるバジリスクにもこの傾向が見られます

ダークソウルのバジリスク(左)とエルデンリングのバジリスク(右)

比べて見ると、目のような模様が死王子仕様に変わっていることがわかります。本来のバジリスクの目は下の方に設置されていて、そちらは特に変わりありませんが、上の偽物の目のパターンが変わっていますね。

 

ここまでの情報から推察するに、ストームヴィル城のゴッドウィンの顔は死の根から芽吹いた彼の一部ではないでしょうか?

ストームヴィル城に芽吹いた「顔」

そして、それはもう一つの恐ろしい真実に気づきを与えます。

ここまで自分の一部を繋がりのない世界にも蔓延することができるのなら、彼は止まることなくこのまま際限なく増殖していくのでしょうか?その行き着く末は?

最後に

通読おつかれまでした。Zullieさんの動画は2~3分ぐらいで解析を含めた面白い内容を頻繁に投稿しているので、ぜひご覧ください。この記事を通して彼女の動画の魅力が伝われば幸いです

参考文献

youtu.be

【翻訳記事】DARK SOULS: Nightfall延期のお知らせ

この記事はDARK SOULS: Daugthers of Ashを手掛けたGrimrukhさんの次回作の大型Mod、DARK SOULS: Nightfall延期お知らせの投稿を翻訳したものです。原文はこちらから

grimrukh.com

皆さん、こんにちは。

今年もいろいろありましたが、悲しいかな、Nightfallの完成(とテスト)は、2月25日のエルデンリング発売までには間に合わないことが明らかになりました。しかし、1月21日にNightfallの最初の数時間をプレイできる体験版をリリースする予定です。延期の理由について、少し説明をします。

我々はDark Soulsへの愛と、Patreonの親切な支持者からのわずかな支援を原動力として、余暇を利用して活動しているファンのチームです。そのため、Nightfallに費やせる時間は常に予測不可能であり、多くの人が経験したように、2021年末(そして2022年初め)の状況は特に我々にとって芳しくありませんでした。

Nightfallの発表日を12月21日から1月21日に延期したとき、1ヶ月あれば少なくとも1週間のテスト期間を確保して開発を完了できると考えていました。しかし、12月前半を2週間かけて大詰めの作業途中に風邪をひいてしまい(このコロナ禍で普通の風邪はまだあるらしい)、Nightfallがエルデンリングの前に発表できる世界線

(a)我々のチームがデスマーチを行いボロボロ状態になっている

(b)完成間近のコンテンツを大量にカットした

(c)ゲームがバグだらけになった

(d)おそらく上記の全て、という世界だということが明らかになったのです。

この発売日の競い合いに勝とうとしたことは後悔していません。6月に具体的な日付を公表したことは、非常に価値のあることでした。そのおかげで、延々と終わりのない新要素の追加に区切りをつけ、Nightfallを明確な終点に向けて真剣に走ることができました。ですが、そうしたいくつかの新要素は、単に抵抗するにはあまりに魅力的でした。我々のチームの専属3DアーティストであるDane Brennandは、私たちが予想していた数の2倍もの輝かしい新規キャラクターモデルを作成してくれました。その間に私はフロムのゲームのHavokアセットを(没アセットも含む)Dark Soulsに直接移植できるツールを開発しました。Meowmaritusは約12種類のゲーム再構築の方法を編み出し、今まで出来なかった全く新しいゲームの可能性を示しました。この快進撃の進行に伴い、以前の作業を一からやり直さなければなりませんでした。このような進展が続いた開発期間で、延期の理由をご察していただければ幸いです。

つまり、『Nightfall』は、私たちが考えていたよりもはるかに野心的な作品になったということです。我々の現在の目的はこれ以上何も追加せず、ゴールに向かってまっしぐらに進むことなのですが、残念ながら『エルデンリング』よりも少し先になってしまいました。お待ちいただいている皆様には、大変ご迷惑をおかけすることとなりますが、今回のModはフルボリュームのゲームを無料で配布することなので、私たちが得れるものは、誇れるものをリリースするという満足感だけなのです。

そのため、1月21日にNightfallの体験版をお届けできるよう、これから1ヶ月かけて最初の数時間のプレイテストを行い、新しい戦闘システム、2つの新規マップ、2つのボス、複数の武器、そしておそらくいくつかの秘密も盛り込んだ体験版を提供できるように作業を進めています。Nightfallの一部をお見せできることを嬉しく思いますし、皆様からのフィードバックをもとに、ゲーム(特にコアな戦闘バランス)のチューニングを行い、正式リリースを目指したいと思います。その後、私たちは皆さんと一緒にエルデンリングを楽しむために一休みすることになると思いますが、すぐにこのプロジェクトを再開し、作業に戻るつもりです。

 

そして、この一年間、素晴らしい熱意と応援をありがとうございました。皆様の温かいお言葉に心から感謝いたします。チーム全体ではありませんが、私自身はこの言葉があったからこそ、今もこうして物作りに励んでいます。

~ Grim

 

参考:www.DeepL.com

【ネタバレ】DARK SOULS: Daughters of Ash のストーリーについて考える・前編【考察】

2021年も余すところあと僅かになりました。alfreidです。今年の穢れは今年のうちに、ということで投稿するか迷ったこの記事を供養いたします。

 

この記事シリーズはファンの二次創作である大型ModのDARK SOULS: Daughters of Ash(以下DoA)の追加されたストーリーを紐解いていこうという目的です
あくまで考察の一例なので、ご注意ください。間違いがあったり、相互性が取れない、あるいは別の解釈も大いにあると思いますので間違いのご指摘はコメントやTwitterにて募集してます

そして、こういう考え方もあるんだよ、という心持ちで読んで頂ければ幸いです
ただ一つとして言えることはこの考察は必ず正しいわけではないとご留意ください。考察に正解はないが、間違いはあるというのが持論です。すなわち、この記事もできるだけ本質に沿った解釈を心がけましたが、本当のところは製作者のGrimrukhさんのみぞ知るという心持ちであります

また、記事の本質上ネタバレ全開の話なので、ご注意ください。初見プレイとその感想は一度しか味わえないものなのでくれぐれも大切にしていきたいものです。

では、長くなりますがよろしくお願いします

 

 

そもそもDaughters of Ashってなに?


フロム・ソフトウェアが開発した『DARK SOULS』をファンが独自の解釈で物語を作り変えた大型Modです。Grimrukh氏が手掛けるダークソウルの世界観はオリジナルからコア部分を残して多くの要素を作り直しており、完全オリジナルのサイドストーリーに独自のシステムが搭載されています。特にバニラの本作を何周もプレイした人ほど楽しめる作りになってると思います

 

このオリジナルストーリーの作りがとてもダークソウルっぽく、一見したところでは解りづらい内容です。新規追加されたテキストを全部読んで、状況証拠を照らし合わせ、仮説を立てて立証して...のようなめんどくさい 考察しがいのある仕様になってます
特に気にして遊んでないと、序盤の「なんだこれ?」がエンディングを迎えた後「なんだこれ?」で終わります。このModを初見で遊んだ人はモヤモヤを抱えたまま終えてしまった人も居るのではないでしょうか(初見の感想としては筆者もそうでした)

 

また、仮にテキストを読んだとしても難解な言葉が用いられていて、分かったような、分からなかった気持ちになります。
今回解説するのは日本語翻訳版ですが、原語の英語も負けないぐらい熟語が頻繁するので、対訳形式をとって一緒に真意の謎に挑みましょう

余談ですがこのオリジナルストーリーの部分には没データが多く用いれています。しかし、本当の没案をそのまま再利用しているより、かなりアレンジをされてる印象です。例えて言うならば、英国で食べたビーフシチューを再現しようとして肉じゃがを作った、みたいな
なので二次創作は二次創作の範囲で楽しむのが良いと思う心持ちであります

 

タイトルにあるDaughters of Ashとは?

タイトルにも使われているこの単語、Daughters of Ash。直訳すると「灰の娘」。
プレイヤーがおそらく初めてこのタイトル回収のイベントを見れるのが偉大なる鴉に祈った時に貰える「選ばれし不死の密約」入手時だと思われます

 

ベルカの密約

ベルカの密約

 

おぞましい父娘罪の告罪符

かつて罪の女神は太陽の子を守れなかった
そして、無辜の坐視を続ける誓いを破り
その代償に滅び、肉体を棄てた

ロードランの大罪父は四人いる
ベルカの名のもとに罪人を誅し
灰の娘たちに救いをもたらしたまえ

                                                         (日本語訳『選ばれし不死の密約』)

 

Solemn indictment of filial cruelty
The Goddess of Sin swore to watch over the
innocent, but broke her vow - and renounced her
corporeal form - when she failed to protect the
Child of Sunlight.

Four of Lordran's wretched tyrants remain
unpunished. Deliver their sentences in Velka's
stead, and liberate their ashen children

                                                       (原文『Pact of Chosen Undead』)

 

身内のひどい仕打ちに対する厳粛な告発
罪の女神は無実の者を見守ると誓ったが
太陽の子を守れなかった時、その誓いを破り、自分の肉体を捨てた

ロードランの4人の卑劣な暴君はまだ罰せられていない
ベルカの代わりに彼らの刑罰を下し
灰の子供たちを解放するのだ

                                                        (直訳『選ばれし不死の契約』)

 

 

 

いきなりややこしい漢字が頻繁しますね。直訳だとまだ意味が分かりやすいですが
一つずつ見ていきましょう

む‐こ【無×辜】
《「辜」は罪の意》罪のないこと。また、その人。

 

ざ‐し【座視/×坐視】
[名](スル)黙って見ているだけで、手出しをしないこと。「—するに忍びない」

                                                                                                  出典:weblio.jp

 

ここから分かることはDoA世界線では

  • ベルカは太陽の子を守れなかった
  • 4人の父に該当する人物に裁きを下す
  • 身内にひどい仕打ちを受けた娘4人を解放する

 

太陽の子というと、太陽の光の女神、グウィネヴィアが連想できます
つまりグウィネヴィアが何らかの仕打ちを受けて、その父であるグウィンが大罪人であると示唆されます

あくまでこの段階で示唆と記述する理由はDoA世界線では色々な設定に変更が加えれていて、バニラの世界線は当てはまらない可能性があるからです。例えるならエ○ァと学園○ヴァで独逸から来日した娘が別のパラレルワールドでは昔からの幼馴染だったぐらい変わっていてもおかしくありません


では、残りの3人の娘は誰で、いったい誰が父親なのでしょうか
DoAをプレイし、ベルカルートを全うした人ならこの答えはご存知だと思います

 

ベルカルートに必要な重要NPCは以下のとおりです

  1. グウィネヴィア
  2. キアラン
  3. プリシラ
  4. 蜘蛛姫

つまるところ、DoAとは父に苦しめられた娘4人を罪の女神ベルカの名を借りて解放する物語です。実際はその父を殺すことになるので「救い」かどうかは疑問になりますが、原文とすり合わせると解放寄りニュアンスの救いなのが視えてきます

ここでは一旦グウィネヴィアのことはゲーム終盤で分かる事実が多いので後に回し、一人のプレイヤーがDoAを進めていく過程で拾える情報を追います

キアランについて考える

グウィン王の四騎士の一人
「王の刃」キアランの仮面

瞳の頭巾はすべての「王の刃」に共通だが
やさしい白磁の仮面は、彼女が特に望み
騎士叙勲により授かったものであり
自身の象牙の髪を伴っている

                                                       (白磁の仮面『DARK SOULS』)

バニラではキアランの出生について詳しい記述がないので、既存の知識だけでは彼女の父親と該当する人物が思い当たりません

DoA世界線の彼女の立ち位置を知るためには変更されたテキストを読む必要があります

 

グウィン王の四騎士に与えられた特別な指輪
スズメバチの指輪は「王の刃」キアランのもの
致命攻撃力を高める効果がある

彼女は自分の呪われた出生を疎み
竜戦争に乗じてグウィンを説得し、養女となった
ーだが死者であっても、血は抗えないものだ

                                                        (日本語訳『スズメバチの指輪』)

 

One of the special rings granted to the four
knights of Gwyn. The Hornet Ring belonged to the
Lord's Blade Ciaran, the royal assassin, and
boosts the power of critical attacks.

Ciaran eschewed her cursed heritage and persuaded
Gwyn to foster her when the bearers of the Lord
Souls allied against the dragons - but blood runs
thick, even among the dead.

                                                        (原文『Hornet Ring』)

 

グウィン王の四騎士に与えられた特別な指輪
スズメバチの指輪は「王の刃」キアランのもの
致命攻撃力を高める効果がある

キアランは呪われた血筋を避けており
王のソウルを見出した者たちが古竜に対して同盟を結んだとき
グウィンを説得して養女となった
ーだが、死者であっても、血は濃いものだ

                                                        (直訳『スズメバチの指輪』)

 

このように、キアランは後天的に王家の神族に加えられ、先天的に生まれた家系は呪われていた、そしてその血筋は死んでいることがわかります。

また英語の原文の最後にある"blood runs thick"とは直訳したら余計意味が分からない日本語になってしまいます。これはメタ読みの解釈になりますが、米国の義務教育の英語授業ではシェークスピアの作品を読み解くことが多々あります。おそらく多くのユーザーは米国出身である可能性を踏まえて、英語の原文を読んだ時にマクベスに於けるシェイクスピア文法を踏襲している印象を受けました

 

Come, you Spirits

That tend on mortal thoughts, unsex me here,

And fill me, from crown to the toe, top-full

Of direst cruelty! make thick my blood;

Stop up the access and passage to remorse;

That no compunctious visitings of Nature

Shake my fell purpose, nor keep peace between

The effect and it!

 

来れ、

殺意の精霊たちよ、私の女らしさを抹殺し、

頭のてっぺんからつま先まで、全身、残忍な殺意で満たすのだ!

私の血の気を濃くせよ哀れみの情へ通う道を遮断せよ、

そうすれば、良心の呵責という人情が私の残忍な目的を動揺させることもなく、

目的が結果に一致する!

                                                      (マクベス夫人、Macbeth, 第1幕、第5場)

 

マクベスのあらすじは野心を抱いた武将が、妻と謀って主君を暗殺し、王位につく話ですが、ここのセリフはマクベス夫人が己の人間である良心を殺し、王殺しという大罪に手を染める決意の現れとなっています。

キアランの血筋が実際に王殺しに発展するかはこの時点では分からないのですが、すくなくとも「呪われた」や「血が濃い」という物騒な単語が飛び交うフレテキに善くないイメージが想起されるのではないでしょうか。また、「血が濃い」というのもそのまま受けて取れる節があり「蛙の子は蛙」のニュアンスも含まれるかもしれません。

 

さて、DoAでは『スズメバチの指輪』を地下墓所(バニラでは巨人墓場に該当するエリア)で拾えるので場所的に死者にまつわる場所であることも理解できます。

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地下墓所

バニラ世界線では黄色霧がかかっていて通れないニトに続く道も初めから開いており、神墓に進められ、そこで待ち受けているのは深い眠りについている最初の死者です。

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神墓(Ritual Grotto)

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王のソウルを奪えば、特殊イベントが発生し、地下墓地方面に白い霧がかかります

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神墓から出ようとすると始まる墓娘キアラン戦

...となると、キアランは墓王ニトの娘であることがわかります。『だが死者であっても、血は抗えないものだ』とは文字通りダークソウルに於ける『最初の死者』であったわけですね。
灰の娘の一人が墓娘キアラン、その父親が墓王ニト、ではその罪なんでしょうか。決定的にその答えが分かることは作中に見受けれなかったのですがイベント上、『アルトリウスのソウル』を過去のウーラシールに居るキアランに渡せば、ニト戦の時にキアランは登場せずニトのみを倒すことができ、ベルカの密約の条件の一つを達成することができます

ここからは推測の話になりますが、キアランはアルトリウスに恋心を抱き、アルトリウスが過去のウーラシールに死んでしまったことを悔いても悔いきれず、自分が忌み嫌っていた血筋に頼ってでも父親に戻ったとなれば、ニトがアルトリウスを蘇らせると約束したのではないでしょうか。しかしそれは欺瞞であり、アルトリウスが蘇ることはない。その蜃気楼をチラつかせ、キアランを傀儡としていることこそがニトの大罪だと筆者は思います

また、上記の考察を補強する根拠として鷹の目ゴーに未使用のセリフに下記のものがあります

そういえば、貴公、アルトリウスを倒したとあれば

キアランの娘っこには、注意した方がよいぞ

あれは…おそらく、アルトリウスに特別な感情を抱いておった…

哀れな娘だ

                                                         (鷹の目ゴーの没セリフ『DARK SOULS』)

 Mod世界線の話で、バニラにもModにも使われてないセリフなんて当てになるかよ!と思った方。大正解です。あくまで筆者の知っている情報を継ぎ合わせた考察なので、ほかにも有力である候補の説はあると思います。

 

プリシラについて考える

プリシラについてはベルカの密約を結ぶ前から早くにその情報の断片が確認できます。おそらく多くのプレイヤーは鐘も鳴らしてないのに入れるセンの鍛冶炉(センの古城)に驚き、とりあえず入ってみるのではないでしょうか。実際はこれがすべてミスリードで、DoAを効率よくプレイするならセンの鍛冶炉は必要なアイテムだけ拾ってエリアごとスキップするのが最善手です。

 

朽ちぬ古竜が隠し持っていた
幼い半竜の尾から生まれた武器
生命狩りの力を帯びており
舞うような剣技が独特である

尾の傷跡は自傷であるようだ
持ち主は出生を悔やんだのか、あるいは
この発見で生き存えると願ったのだろうか

                                                         (日本語訳『半竜の短剣』)

 

This dagger, found in the possession of an ancient
everlasting dragon, came from the tail of a much
younger crossbreed. It dances about when wielded,
and is imbued with the power of lifehunt.

The tail's cut appears self-inflicted. Did its
owner regret her heritage, or simply hope its
discovery would conceal her survival?

                                                         (原文『Crossbreed Dagger』)

 

朽ちぬ古竜が持っていた

幼い混血の竜の尻尾から生まれた武器

生命狩りの力を帯びており

舞うような剣技が独特である

 

尻尾の切口は自傷を示している

持ち主は自分の出生を後悔していたのか

あるいは単に、その発見で

自分の生存を隠せることを願ったのだろうか

                                                         (直訳『半竜の短剣』)

 

テキストの相互性について、英語だとCrossbreed=混血が用いられているのに対し、日本語訳だと『半竜』と断定しています。これは公式訳で英語版がCrossbreed Priscillaに対し、原文だと『半竜プリシラ』となっていることを踏襲しています。ダークソウルをローカライズした会社のFrognationは宮崎節の英語昇華を本当に巧みにするのですが、割とリベラルな意訳をする印象があります。半竜を直訳風にするとHalf blood dragonが思い浮かびます。これが長いか、あるいはダサいので語感の良いCrossbreedを採用したたのではないかと思われます。余談ですがこの半竜の単語に対して混血(Crossbreed)は翻訳で情報が失われた!と英語考察界隈に物議を醸していた時期もありました。

 

話が脱線したので戻しましょう。このテキストから分かることはプリシラの尻尾がセンの鍛冶炉にあった、彼女は自分の出生を悔やむか逃げ延びようとしている、生命狩りの力は健在である

 

最後のポイントがなぜ重要であるかは、バニラの生命狩りの設定をおさらいしましょう

 

エレーミアス絵画世界に閉じ込められた
純白の半竜プリシラのソウルから生まれた鎌

神々さえ恐怖した生命狩りの力を持つが
半竜ならざる者がその力を振るえば
その力は使用者にもはね返ってしまう

                                       (生命狩りの鎌『DARK SOULS』)

とあるように、生命狩りとは強大な力であることがわかります。バニラ世界線ではプリシラと絵画世界の情報があまり多くないので色々と謎が残っている印象ですが、DoAはこの生命狩りの力の成り立ちを掘り下げた説を提示します。

 

その壊れ様は落花狼藉であり
エレーミアスが匿った、異端の半竜プリシラのソウル

異能の英雄は非業の邂逅から生まれるとされるが
プリシラの運命は胎盤より生まれる前に捻れていた
千のルーンを体内に刻まれた彼女のソウルは
大量の出血を強い、魂を蝕む

特別な存在は特別なソウルを有する
使用により真の孤独を見える

                                                         (日本語訳『プリシラのソウル』)

 

Soul of the outcast crossbreed Priscilla, most
broken of the broken things sheltered by Ariamis.

Unholy unions often produce unlikely heroes, but
Priscilla's destiny was corrupted in vitro. Her
soul bleeds death from the thousand runic marks
etched into its essence.

Special beings have special souls. Use the soul of
Priscilla to know true solitude.

                                                         (原文『Soul of Priscilla』)

 

つまはじきとされた混血のプリシラのソウル

壊れに壊れ、エレーミアスに保護された

 

非聖な同盟は思いがけない英雄を生むが

プリシラの運命は試験管の中で狂わされた

彼女に刻み込まれた千のルーンは死を流血する

 

特別な存在は特別なソウルを有する
プリシラのソウルの使用により真の孤独が知れる

                                                         (直訳『プリシラのソウル』)

 

英語テキストの『in vitro』という単語を『試験管』と直訳すると彼女の父、ないしその罪が垣間見えそうです。また、『ルーン』に関してはDoA新要素であり『ルーン武器』などが存在しますが、ここでは説明を割愛して魔法装置的な何かという認識で進みます。つまりプリシラは生まれる前、試験管の中で千のルーンを刻み込まれ、大量の出血を強いた実験こそが生命狩りの力ではないでしょうか。特別な目的を持って生まれたホムンクルスのような存在ですね。イメージ的には胎盤外の時から呪的処理を施されたイリ○スフィール・フォン・○インツベルン。

そんなマッド・サイエンティストみたいなことする人物はダークソウルにおいて大体一人、白竜シースです。ではそのシースがホムンクルスをどうやって造ったの?下手に前例としてイリヤを扱ったので、普通の受精卵から子宮の中で過ごして胎児改造された赤子として生まれて成長するイメージに引っ張られるかもしれません。残念ながら筆者には作中内にホムンクルス製造過程を示唆する根拠を見つけれなかったので、何かしらを参考にします。ホムンクルスの資料の原点とされる文献De natura rerum (1537) いわく、蒸留器に精液を加えて40日間腐敗させるとホムンクルスが生まれるそうです。誰かと交わって娘をもうけた、というより自己完結した実験作が自分の娘だった印象も抱きます。どちらにせよ生まれてしまったプリシラに憐れみを感じた罪の女神は許さなかったので誅伐の対象なのでしょう。

 

最後に

通読お疲れさまでした。8600字超です。

 

考察としては全容がまったく掴めない記事になってしまいましたが、次回までにグウィネヴィアや蜘蛛姫についてまとめたいと思います。本来、一つの記事として知っていることをすべて書くつもりでしたが、量が膨大になってしまい.... 苦肉の策として投稿できるレベルのものを分解しました。では、良いお年を。