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【ネタバレ】DARK SOULS: Daughters of Ash のストーリーについて考える・前編【考察】

2021年も余すところあと僅かになりました。alfreidです。今年の穢れは今年のうちに、ということで投稿するか迷ったこの記事を供養いたします。

 

この記事シリーズはファンの二次創作である大型ModのDARK SOULS: Daughters of Ash(以下DoA)の追加されたストーリーを紐解いていこうという目的です
あくまで考察の一例なので、ご注意ください。間違いがあったり、相互性が取れない、あるいは別の解釈も大いにあると思いますので間違いのご指摘はコメントやTwitterにて募集してます

そして、こういう考え方もあるんだよ、という心持ちで読んで頂ければ幸いです
ただ一つとして言えることはこの考察は必ず正しいわけではないとご留意ください。考察に正解はないが、間違いはあるというのが持論です。すなわち、この記事もできるだけ本質に沿った解釈を心がけましたが、本当のところは製作者のGrimrukhさんのみぞ知るという心持ちであります

また、記事の本質上ネタバレ全開の話なので、ご注意ください。初見プレイとその感想は一度しか味わえないものなのでくれぐれも大切にしていきたいものです。

では、長くなりますがよろしくお願いします

 

 

そもそもDaughters of Ashってなに?


フロム・ソフトウェアが開発した『DARK SOULS』をファンが独自の解釈で物語を作り変えた大型Modです。Grimrukh氏が手掛けるダークソウルの世界観はオリジナルからコア部分を残して多くの要素を作り直しており、完全オリジナルのサイドストーリーに独自のシステムが搭載されています。特にバニラの本作を何周もプレイした人ほど楽しめる作りになってると思います

 

このオリジナルストーリーの作りがとてもダークソウルっぽく、一見したところでは解りづらい内容です。新規追加されたテキストを全部読んで、状況証拠を照らし合わせ、仮説を立てて立証して...のようなめんどくさい 考察しがいのある仕様になってます
特に気にして遊んでないと、序盤の「なんだこれ?」がエンディングを迎えた後「なんだこれ?」で終わります。このModを初見で遊んだ人はモヤモヤを抱えたまま終えてしまった人も居るのではないでしょうか(初見の感想としては筆者もそうでした)

 

また、仮にテキストを読んだとしても難解な言葉が用いられていて、分かったような、分からなかった気持ちになります。
今回解説するのは日本語翻訳版ですが、原語の英語も負けないぐらい熟語が頻繁するので、対訳形式をとって一緒に真意の謎に挑みましょう

余談ですがこのオリジナルストーリーの部分には没データが多く用いれています。しかし、本当の没案をそのまま再利用しているより、かなりアレンジをされてる印象です。例えて言うならば、英国で食べたビーフシチューを再現しようとして肉じゃがを作った、みたいな
なので二次創作は二次創作の範囲で楽しむのが良いと思う心持ちであります

 

タイトルにあるDaughters of Ashとは?

タイトルにも使われているこの単語、Daughters of Ash。直訳すると「灰の娘」。
プレイヤーがおそらく初めてこのタイトル回収のイベントを見れるのが偉大なる鴉に祈った時に貰える「選ばれし不死の密約」入手時だと思われます

 

ベルカの密約

ベルカの密約

 

おぞましい父娘罪の告罪符

かつて罪の女神は太陽の子を守れなかった
そして、無辜の坐視を続ける誓いを破り
その代償に滅び、肉体を棄てた

ロードランの大罪父は四人いる
ベルカの名のもとに罪人を誅し
灰の娘たちに救いをもたらしたまえ

                                                         (日本語訳『選ばれし不死の密約』)

 

Solemn indictment of filial cruelty
The Goddess of Sin swore to watch over the
innocent, but broke her vow - and renounced her
corporeal form - when she failed to protect the
Child of Sunlight.

Four of Lordran's wretched tyrants remain
unpunished. Deliver their sentences in Velka's
stead, and liberate their ashen children

                                                       (原文『Pact of Chosen Undead』)

 

身内のひどい仕打ちに対する厳粛な告発
罪の女神は無実の者を見守ると誓ったが
太陽の子を守れなかった時、その誓いを破り、自分の肉体を捨てた

ロードランの4人の卑劣な暴君はまだ罰せられていない
ベルカの代わりに彼らの刑罰を下し
灰の子供たちを解放するのだ

                                                        (直訳『選ばれし不死の契約』)

 

 

 

いきなりややこしい漢字が頻繁しますね。直訳だとまだ意味が分かりやすいですが
一つずつ見ていきましょう

む‐こ【無×辜】
《「辜」は罪の意》罪のないこと。また、その人。

 

ざ‐し【座視/×坐視】
[名](スル)黙って見ているだけで、手出しをしないこと。「—するに忍びない」

                                                                                                  出典:weblio.jp

 

ここから分かることはDoA世界線では

  • ベルカは太陽の子を守れなかった
  • 4人の父に該当する人物に裁きを下す
  • 身内にひどい仕打ちを受けた娘4人を解放する

 

太陽の子というと、太陽の光の女神、グウィネヴィアが連想できます
つまりグウィネヴィアが何らかの仕打ちを受けて、その父であるグウィンが大罪人であると示唆されます

あくまでこの段階で示唆と記述する理由はDoA世界線では色々な設定に変更が加えれていて、バニラの世界線は当てはまらない可能性があるからです。例えるならエ○ァと学園○ヴァで独逸から来日した娘が別のパラレルワールドでは昔からの幼馴染だったぐらい変わっていてもおかしくありません


では、残りの3人の娘は誰で、いったい誰が父親なのでしょうか
DoAをプレイし、ベルカルートを全うした人ならこの答えはご存知だと思います

 

ベルカルートに必要な重要NPCは以下のとおりです

  1. グウィネヴィア
  2. キアラン
  3. プリシラ
  4. 蜘蛛姫

つまるところ、DoAとは父に苦しめられた娘4人を罪の女神ベルカの名を借りて解放する物語です。実際はその父を殺すことになるので「救い」かどうかは疑問になりますが、原文とすり合わせると解放寄りニュアンスの救いなのが視えてきます

ここでは一旦グウィネヴィアのことはゲーム終盤で分かる事実が多いので後に回し、一人のプレイヤーがDoAを進めていく過程で拾える情報を追います

キアランについて考える

グウィン王の四騎士の一人
「王の刃」キアランの仮面

瞳の頭巾はすべての「王の刃」に共通だが
やさしい白磁の仮面は、彼女が特に望み
騎士叙勲により授かったものであり
自身の象牙の髪を伴っている

                                                       (白磁の仮面『DARK SOULS』)

バニラではキアランの出生について詳しい記述がないので、既存の知識だけでは彼女の父親と該当する人物が思い当たりません

DoA世界線の彼女の立ち位置を知るためには変更されたテキストを読む必要があります

 

グウィン王の四騎士に与えられた特別な指輪
スズメバチの指輪は「王の刃」キアランのもの
致命攻撃力を高める効果がある

彼女は自分の呪われた出生を疎み
竜戦争に乗じてグウィンを説得し、養女となった
ーだが死者であっても、血は抗えないものだ

                                                        (日本語訳『スズメバチの指輪』)

 

One of the special rings granted to the four
knights of Gwyn. The Hornet Ring belonged to the
Lord's Blade Ciaran, the royal assassin, and
boosts the power of critical attacks.

Ciaran eschewed her cursed heritage and persuaded
Gwyn to foster her when the bearers of the Lord
Souls allied against the dragons - but blood runs
thick, even among the dead.

                                                        (原文『Hornet Ring』)

 

グウィン王の四騎士に与えられた特別な指輪
スズメバチの指輪は「王の刃」キアランのもの
致命攻撃力を高める効果がある

キアランは呪われた血筋を避けており
王のソウルを見出した者たちが古竜に対して同盟を結んだとき
グウィンを説得して養女となった
ーだが、死者であっても、血は濃いものだ

                                                        (直訳『スズメバチの指輪』)

 

このように、キアランは後天的に王家の神族に加えられ、先天的に生まれた家系は呪われていた、そしてその血筋は死んでいることがわかります。

また英語の原文の最後にある"blood runs thick"とは直訳したら余計意味が分からない日本語になってしまいます。これはメタ読みの解釈になりますが、米国の義務教育の英語授業ではシェークスピアの作品を読み解くことが多々あります。おそらく多くのユーザーは米国出身である可能性を踏まえて、英語の原文を読んだ時にマクベスに於けるシェイクスピア文法を踏襲している印象を受けました

 

Come, you Spirits

That tend on mortal thoughts, unsex me here,

And fill me, from crown to the toe, top-full

Of direst cruelty! make thick my blood;

Stop up the access and passage to remorse;

That no compunctious visitings of Nature

Shake my fell purpose, nor keep peace between

The effect and it!

 

来れ、

殺意の精霊たちよ、私の女らしさを抹殺し、

頭のてっぺんからつま先まで、全身、残忍な殺意で満たすのだ!

私の血の気を濃くせよ哀れみの情へ通う道を遮断せよ、

そうすれば、良心の呵責という人情が私の残忍な目的を動揺させることもなく、

目的が結果に一致する!

                                                      (マクベス夫人、Macbeth, 第1幕、第5場)

 

マクベスのあらすじは野心を抱いた武将が、妻と謀って主君を暗殺し、王位につく話ですが、ここのセリフはマクベス夫人が己の人間である良心を殺し、王殺しという大罪に手を染める決意の現れとなっています。

キアランの血筋が実際に王殺しに発展するかはこの時点では分からないのですが、すくなくとも「呪われた」や「血が濃い」という物騒な単語が飛び交うフレテキに善くないイメージが想起されるのではないでしょうか。また、「血が濃い」というのもそのまま受けて取れる節があり「蛙の子は蛙」のニュアンスも含まれるかもしれません。

 

さて、DoAでは『スズメバチの指輪』を地下墓所(バニラでは巨人墓場に該当するエリア)で拾えるので場所的に死者にまつわる場所であることも理解できます。

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地下墓所

バニラ世界線では黄色霧がかかっていて通れないニトに続く道も初めから開いており、神墓に進められ、そこで待ち受けているのは深い眠りについている最初の死者です。

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神墓(Ritual Grotto)

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王のソウルを奪えば、特殊イベントが発生し、地下墓地方面に白い霧がかかります

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神墓から出ようとすると始まる墓娘キアラン戦

...となると、キアランは墓王ニトの娘であることがわかります。『だが死者であっても、血は抗えないものだ』とは文字通りダークソウルに於ける『最初の死者』であったわけですね。
灰の娘の一人が墓娘キアラン、その父親が墓王ニト、ではその罪なんでしょうか。決定的にその答えが分かることは作中に見受けれなかったのですがイベント上、『アルトリウスのソウル』を過去のウーラシールに居るキアランに渡せば、ニト戦の時にキアランは登場せずニトのみを倒すことができ、ベルカの密約の条件の一つを達成することができます

ここからは推測の話になりますが、キアランはアルトリウスに恋心を抱き、アルトリウスが過去のウーラシールに死んでしまったことを悔いても悔いきれず、自分が忌み嫌っていた血筋に頼ってでも父親に戻ったとなれば、ニトがアルトリウスを蘇らせると約束したのではないでしょうか。しかしそれは欺瞞であり、アルトリウスが蘇ることはない。その蜃気楼をチラつかせ、キアランを傀儡としていることこそがニトの大罪だと筆者は思います

また、上記の考察を補強する根拠として鷹の目ゴーに未使用のセリフに下記のものがあります

そういえば、貴公、アルトリウスを倒したとあれば

キアランの娘っこには、注意した方がよいぞ

あれは…おそらく、アルトリウスに特別な感情を抱いておった…

哀れな娘だ

                                                         (鷹の目ゴーの没セリフ『DARK SOULS』)

 Mod世界線の話で、バニラにもModにも使われてないセリフなんて当てになるかよ!と思った方。大正解です。あくまで筆者の知っている情報を継ぎ合わせた考察なので、ほかにも有力である候補の説はあると思います。

 

プリシラについて考える

プリシラについてはベルカの密約を結ぶ前から早くにその情報の断片が確認できます。おそらく多くのプレイヤーは鐘も鳴らしてないのに入れるセンの鍛冶炉(センの古城)に驚き、とりあえず入ってみるのではないでしょうか。実際はこれがすべてミスリードで、DoAを効率よくプレイするならセンの鍛冶炉は必要なアイテムだけ拾ってエリアごとスキップするのが最善手です。

 

朽ちぬ古竜が隠し持っていた
幼い半竜の尾から生まれた武器
生命狩りの力を帯びており
舞うような剣技が独特である

尾の傷跡は自傷であるようだ
持ち主は出生を悔やんだのか、あるいは
この発見で生き存えると願ったのだろうか

                                                         (日本語訳『半竜の短剣』)

 

This dagger, found in the possession of an ancient
everlasting dragon, came from the tail of a much
younger crossbreed. It dances about when wielded,
and is imbued with the power of lifehunt.

The tail's cut appears self-inflicted. Did its
owner regret her heritage, or simply hope its
discovery would conceal her survival?

                                                         (原文『Crossbreed Dagger』)

 

朽ちぬ古竜が持っていた

幼い混血の竜の尻尾から生まれた武器

生命狩りの力を帯びており

舞うような剣技が独特である

 

尻尾の切口は自傷を示している

持ち主は自分の出生を後悔していたのか

あるいは単に、その発見で

自分の生存を隠せることを願ったのだろうか

                                                         (直訳『半竜の短剣』)

 

テキストの相互性について、英語だとCrossbreed=混血が用いられているのに対し、日本語訳だと『半竜』と断定しています。これは公式訳で英語版がCrossbreed Priscillaに対し、原文だと『半竜プリシラ』となっていることを踏襲しています。ダークソウルをローカライズした会社のFrognationは宮崎節の英語昇華を本当に巧みにするのですが、割とリベラルな意訳をする印象があります。半竜を直訳風にするとHalf blood dragonが思い浮かびます。これが長いか、あるいはダサいので語感の良いCrossbreedを採用したたのではないかと思われます。余談ですがこの半竜の単語に対して混血(Crossbreed)は翻訳で情報が失われた!と英語考察界隈に物議を醸していた時期もありました。

 

話が脱線したので戻しましょう。このテキストから分かることはプリシラの尻尾がセンの鍛冶炉にあった、彼女は自分の出生を悔やむか逃げ延びようとしている、生命狩りの力は健在である

 

最後のポイントがなぜ重要であるかは、バニラの生命狩りの設定をおさらいしましょう

 

エレーミアス絵画世界に閉じ込められた
純白の半竜プリシラのソウルから生まれた鎌

神々さえ恐怖した生命狩りの力を持つが
半竜ならざる者がその力を振るえば
その力は使用者にもはね返ってしまう

                                       (生命狩りの鎌『DARK SOULS』)

とあるように、生命狩りとは強大な力であることがわかります。バニラ世界線ではプリシラと絵画世界の情報があまり多くないので色々と謎が残っている印象ですが、DoAはこの生命狩りの力の成り立ちを掘り下げた説を提示します。

 

その壊れ様は落花狼藉であり
エレーミアスが匿った、異端の半竜プリシラのソウル

異能の英雄は非業の邂逅から生まれるとされるが
プリシラの運命は胎盤より生まれる前に捻れていた
千のルーンを体内に刻まれた彼女のソウルは
大量の出血を強い、魂を蝕む

特別な存在は特別なソウルを有する
使用により真の孤独を見える

                                                         (日本語訳『プリシラのソウル』)

 

Soul of the outcast crossbreed Priscilla, most
broken of the broken things sheltered by Ariamis.

Unholy unions often produce unlikely heroes, but
Priscilla's destiny was corrupted in vitro. Her
soul bleeds death from the thousand runic marks
etched into its essence.

Special beings have special souls. Use the soul of
Priscilla to know true solitude.

                                                         (原文『Soul of Priscilla』)

 

つまはじきとされた混血のプリシラのソウル

壊れに壊れ、エレーミアスに保護された

 

非聖な同盟は思いがけない英雄を生むが

プリシラの運命は試験管の中で狂わされた

彼女に刻み込まれた千のルーンは死を流血する

 

特別な存在は特別なソウルを有する
プリシラのソウルの使用により真の孤独が知れる

                                                         (直訳『プリシラのソウル』)

 

英語テキストの『in vitro』という単語を『試験管』と直訳すると彼女の父、ないしその罪が垣間見えそうです。また、『ルーン』に関してはDoA新要素であり『ルーン武器』などが存在しますが、ここでは説明を割愛して魔法装置的な何かという認識で進みます。つまりプリシラは生まれる前、試験管の中で千のルーンを刻み込まれ、大量の出血を強いた実験こそが生命狩りの力ではないでしょうか。特別な目的を持って生まれたホムンクルスのような存在ですね。イメージ的には胎盤外の時から呪的処理を施されたイリ○スフィール・フォン・○インツベルン。

そんなマッド・サイエンティストみたいなことする人物はダークソウルにおいて大体一人、白竜シースです。ではそのシースがホムンクルスをどうやって造ったの?下手に前例としてイリヤを扱ったので、普通の受精卵から子宮の中で過ごして胎児改造された赤子として生まれて成長するイメージに引っ張られるかもしれません。残念ながら筆者には作中内にホムンクルス製造過程を示唆する根拠を見つけれなかったので、何かしらを参考にします。ホムンクルスの資料の原点とされる文献De natura rerum (1537) いわく、蒸留器に精液を加えて40日間腐敗させるとホムンクルスが生まれるそうです。誰かと交わって娘をもうけた、というより自己完結した実験作が自分の娘だった印象も抱きます。どちらにせよ生まれてしまったプリシラに憐れみを感じた罪の女神は許さなかったので誅伐の対象なのでしょう。

 

最後に

通読お疲れさまでした。8600字超です。

 

考察としては全容がまったく掴めない記事になってしまいましたが、次回までにグウィネヴィアや蜘蛛姫についてまとめたいと思います。本来、一つの記事として知っていることをすべて書くつもりでしたが、量が膨大になってしまい.... 苦肉の策として投稿できるレベルのものを分解しました。では、良いお年を。